梅雨も明け、いよいよ夏本場です。休止されていた夏祭りや花火大会も、徐々に復活しつつあります。夏祭りや花火大会と言えば、「浴衣」。普段は着ないような大胆な柄も、浴衣ならむしろ気分を盛り上げてくれます。今回は、浴衣の柄に見る個性豊かな植物の柄と、そこに込められた意味をご紹介してみたいと思います。
浴衣はもともと、平安時代の貴族が入浴の際に着用した湯帷子(ゆかたびら)がその原型と考えられています。江戸時代、銭湯の普及とともに庶民にも広がり、さらに木綿栽培の発達により綿素材が普及したことで、その吸湿性の良さから入浴後に羽織るものへと変化していきます。庶民文化の発達とともに絵柄も様々なものが考案され、江戸時代中頃には庶民の夏の普段着として浸透しました。
このように、浴衣はもともと湯上りに着るバスローブ的な役割であったことから和装の中でも最もカジュアルなもとされ、絵柄や装いの幅も比較的制約が少なく、自由に人々に楽しまれてきました。
そんな人々に広く愛されてきた浴衣には、人々に親しまれてきた様々な植物が柄として取り入れられています。一体、日本人はどのような思いをその柄に込めてきたのでしょうか。代表的なものからいくつかご紹介しましょう。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉を聞かれたことはあるかもしれませんが、この表現は、立っても座っても歩いても、その姿が美しい女性の様子を表すのに使われてきました。ここで使われている牡丹、芍薬、百合はいずれも浴衣の古典柄によく登場します。同じボタン科の芍薬や牡丹は、原産地の中国では上流階級に人気があったとされ、幸せや富、女性の美しさの象徴とされていました。百合も、そのすっきりとしたたたずまいから、純粋や無垢、威厳を象徴するものとして好まれてきました。

菖蒲は、まっすぐ剣のように伸びた葉と紫の色合いの品のある花が特徴ですが、「しょうぶ」と読む音が「勝負」や「尚武(武士の心得)」に通じることから、浴衣だけでなく甲冑や武具などにも用いられてきた柄です。勝負強さや礼儀正しさ、延命長寿などの意味が込められています。

菊の文様は、皇室の紋章にも使用されているとおり、その花言葉も「高貴、高潔」といった意味があります。落ち着きと品を感じさせる柄として、浴衣でも好まれています。

また、浴衣の柄に植物柄が用いられているのは女性ものだけではありません。一見幾何学模様のように見える「麻の葉柄」は男性の浴衣で定番ですが、これにも「成長」や「魔よけ」といった意味があるとされています。

これ以外にも、浴衣の柄に用いられている植物モチーフはたくさんあります。例えば「朝顔」なら固い絆や愛情、「撫子(なでしこ)」であれば純粋な愛や貞節、「紫陽花」は小さな花が集まった花の形から「和気藹々、家族団欒」など、それぞれに意味があります。こうした植物の特徴や季節感から昔の人々が連想し、結び付けてきたもので、季語や花言葉としても今も受け継がれています。
こうして見ると、浴衣の柄も単なるデザインとしてではなく、様々な願いが込められたものとして感じられ、袖を通すときの気分も違ったものになるでしょう。今年の夏は、久しぶりに浴衣でおでかけしてみませんか。あなたの浴衣の柄はどんな柄で、どんな意味があるのしょう。Picturethisで季語や花言葉を探してみましょう!