
まず日本の食卓では、ノリやワカメ、ヒジキなどの海藻はお馴染みです。食物繊維が豊富で低カロリーなため健康食として人気の海藻類ですが、これらがどのような姿で海中に生えているか、考えたことがある人は少ないかもしれません。

海藻は、私たちが普段目にする陸上の植物とは構造が大きく異なり、「根」や「茎」を持ちません。「根」を張っているように見える部分は、海水に流さてしまわないよう固定しているだけで、根ではありません。海水中では浮力が働くため、自分の体を支え、体内で水や養分を運ぶための根や茎は持たず、かわりに自分の周囲を満たしている海水から直接栄養を吸収します。

海藻の色は、緑、紅、褐色などと様々です。これは、それぞれの生息する深さによって異なり、効率よく太陽光を吸収するために進化した結果です。光がよく届く浅い海には緑色が多く、深い場所には海深くまで届く緑色の光を効率的に吸収できる赤い海藻が分布しています。

では、そんな海藻について、その歴史を遡ってみましょう。地球が誕生したおよそ46億年前には、現在のような陸地も海も存在しませんでした。惑星全体に広がるマグマの海に、地球が冷えるにつれ降り続いた雨水が注ぎ込み、原始の海が生まれました。そこにやがて命が誕生し、海藻類が登場します。そう、海藻は私たち大先輩とも言えるのです。
この海藻たちは、ある働きにより、地球に大きな変化をもたらしました。二酸化炭素を吸収し酸素を放出する「光合成」です。これにより大気中に酸素が増え、紫外線と反応してオゾン層が形成されました。このおかげで、地上に降り注ぐ紫外線が弱められ、生き物は陸上でも暮らせるようになったのです。

このように、地球の進化の過程で重要な役割を果たしてきた海の植物ですが、現在もそれは変わりません。海草類は、魚たちの産卵や稚魚が育つ場となるため「海のゆりかご」とも呼ばれます。一部の沿岸地域ではジャイアントケルプと呼ばれる、高さ30mにまで達する大型の海藻が見られます。これらは「海中林」とも呼ばれ、多くの海の生き物の隠れ家にもなり、海の豊かな生態系を守るのに役立っているのです。

また海藻は、窒素やリンなどを栄養分として吸収するため、海水をきれいにしてくれる役割もあります。生活排水として海に流入した栄養分を吸収し、環境問題の一つでもある海の「富栄養化」を防いでくれるのです。
ちなみに、よく海藻と混同される「海草」は、進化の過程で一度陸上に上がり、再び海に戻ってきた陸の植物の仲間です。このため海草は海藻とは異なり、陸上生活で得た「根」や「茎」を持ち、花を咲かせて子孫を増やします。
地球上の生命は全て、海の植物なしには成り立たなかったものです。それは私たち人間も同じです。水の中で揺らめく海の植物の姿をいつまでも眺めていても飽きないも、そのせいかもしれません。最近では、海中の生態系を水槽内に再現するマリンアクアリウムも人気です。皆さんも、海の植物の魅力に心を動かされたら、PictureThisでいろいろな海藻の種類を調べてみましょう!
